連夜暑さで目が覚め、今日こそは昼寝と思っていた昨日。
電話が鳴った。
近所の高校生。娘か息子に用かと思ったら
「文化祭で弾きたい曲があるんだけどさ」ときた。私か。
ぐりーんのあいうた。
「弾いてみたら お母さんが音が違うって言うんだ。
何がいかんのか見てくれないかな」
鍵盤に触らなくなって久しい。若い頃エレクトーンを習っていたから
子供達に基本だけは教えておこうと、ついでに近所の子もみたけど。
電話をしてきた男児もそのうちのひとりだが
およそピアノなど弾きそうもないキャラと指で、
だが唯一彼だけが今でもピアノに触ってる。
「気が済むのなら聞いてあげるけど 多分分からんと思う」
午後に約束して電話を切る。
息子が部活から帰るのを待ってぐりーんの曲を携帯で流して貰う。
私はもともと耳(音感)のいい方ではない。
彼の母親(一応セミプロの部類に入るんじゃないか)で分からないもの
私に原曲との微妙な違いなんか分かる筈がないんじゃないか。
と思いながら自宅に行く。
「……お前 なんでシャープつけてんだよ!」
「え?」
「楽譜! 楽譜 見ろ。ここ(最初)にフラットが4つ書いてあるだろ!
シとミとラとレにフラットがつくんだよ この曲は!
あんた勝手に半調移調して弾いてる。で左手だけ楽譜のコードで弾くから
そりゃ気持ち悪いわさ! どあほが」
耳以前の問題だった。
覚えてしまった右手に合わせてコードを書き換えるか 迷ったが
それも面倒だから楽譜どおりに弾き直させることにする。
だが彼が弾くのはエレクトーンではない。
コード和音のべた押しでは演奏にならない。
知らない人には分からないだろうが
エレクトーンとピアノは別物である。
私がやめる頃はエレクトーン演奏もピアノに近づいていたが
それでもやっぱり左足の存在が大きい。
基本的にエレクトーンの左手伴奏とピアノのそれは違うのである。
大体がこのあいうた ピアノには合わないんじゃないか。
だが本人がこれがいいと言うのなら仕方ない。
左手を単音と二重音で入れてみる。
「私がアレンジするとみんなバラードになるんだよな」
ま ばらーど風あいうたも面白いんじゃないかと思うが
こいつが弾くと短調も行進曲になる。
…どんなんじゃ。
って簡単に「アレンジ」と言ったが、全然簡単じゃない。
もともとないセンスを訓練で人並にひきあげていたけど
その勘もきれいになくなってしまった。
そして何より。
弾けない のである。
入れるべき音は和音と規則でなんとか割り出せる。しかし
自分で書いた譜を自分で弾けない。
こんな感じだよと聞かせてやれないと
いくら譜面におこしても弾けないだろう。
弾けるかどうか分からないけど
とりあえず楽譜にだけしてくると言って帰ってきたが
それだって言うほど簡単ではないのであった。
家に鍵盤がないんだもん! 確認できないんだもん!
それに。
あいうたの楽譜を見たことのある人はいないだろうが
16分音符の羅列なんだよ。
進級試験の際、編曲した曲は手書きの楽譜を提出しなければならない。
それに比べたら楽だけど もうそんなの20年以上前の話で。
ってかさあ こいつ受験生なんだよな。
付属の大学に行くかと思ってたらそうでもないようで。
約束したから楽譜は書くけど
それをマスターできるまでに練習するかどうかは
お母さんと相談かも知れんな。
やれやれ。
音楽マメ知識。
5線譜の最初にシャープとかフラットとかついている時
ナチュラルで打ち消されない限り、その曲全体にシャープやフラットがかかる。
シャープでもフラットでもつく順番は決まっていて
シャープがひとつの時はファ、ふたつの時はファとド、みっつの時はファとドとソ…
フラットならひとつの時はシ、ふたつならシとミ、みっつならシとミとラ…
シャープは5音ずつ主音がずれていく。
何もつかないハ調の時は「ド」 シャープがひとつつくと「ソ」 ふたつだと「レ」
ソはハニホヘトで「ト」にあたるので「ト長調」 レはハ二のニで「ニ長調」。
フラットは4音ずつ。ハ長調・フラット一つで「ヘ長調」主音はファ。
短調はまた別。
この短調を教える時に「ほら 物悲しい感じがするでしょう」と言ったら
子供達は「物悲しいって何?」と訊いた。
ものを教えるって難しい。
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